佐々木譲(ささき じょう)
1950年3月16日-
本名は同じ漢字で、ささきゆずると読む。
東京農業大学客員教授。
夕張市生まれ。北海道中標津町在住。札幌月寒高等学校卒業。
卒業後、京都や東京などでフリーター生活を行い、本田技研の工場労働者を1年で退職した。
1979年「鉄騎兵、跳んだ」でオール読物新人賞を受賞し、作家デビュー。
同作は映画化もされ評判となった。
軍事や歴史を主に題材に採り、ジュブナイル小説も手がけている。
また、数々の賞を受賞している。
1989年 『エトロフ発緊急電』で
日本推理作家協会賞長篇部門・日本冒険小説協会大賞・山本周五郎賞を受賞。
1994年 『ストックホルムの密使』で日本冒険小説協会大賞を受賞。
2002年 『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。
2008年版 『このミステリーがすごい』で、『警官の血』が1位となる。
2010年 『廃墟に乞う』で第142回直木賞受賞。高卒の作家としては6年ぶりの快挙であった。
作品の特徴
作風は、日本の作家としてはかなり特異なもので、現在や過去の社会的な問題を
上手にエンターティンメントに仕上げてみせるものが多い。
たとえば「真夜中の遠い彼方(後に「新宿のありふれた夜」と改題)」では
暴力団・ボートピープル・違法入国労働者など、「夜にその名を呼べば」では冷戦・警察など、
「仮借なき明日」「ハロウィンに消えた」では日本企業の海外進出とそれに伴う文化摩擦など、
「ネプチューンの迷宮」では原子力・放射性廃棄物の処理や国家テロなどが、
それぞれ扱われている。
また、緻密に組み立てられた戦争もの(太平洋戦争三部作など)も評価が高いが、
それらにも、「ベルリン飛行指令」では第二次世界大戦直前のインドやトルコなどを含む
アジア情勢が、「エトロフ発緊急電」では日系アメリカ移民など、「ストックホルムの密使」
ではポーランド問題などが、重層的に盛り込まれている。
時代がさがるにつれ、出身地の北海道を舞台とした西部劇的な作品が増えた。
それらの作品では、江戸末期〜明治にかけての蝦夷収奪や侵攻、アイヌ民族と和人と
の摩擦も扱われてはいるが、それ以前の作品よりはだいぶ比重が軽くなっており、
より活劇的なエンターティンメント性が重視されている。
また、初期の「犬どもの栄光」「夜にその名を呼べば」の系列とも言える警察小説も増加し、
北海道警を舞台とした「うたう警官(のちに『笑う警官』に改題)」や警官家族の三代にわたる
歴史を描いた「警官の血」など、後年の作品の傾向のひとつとなっている。