2013/01/30 08:18:52
十勝国(とかちのくに) 44
近世蝦夷人物誌
北海道の名付け親でもある松浦武四郎が残した著作の中に
「近世蝦夷人物誌」というのがある。
この著書は安政4年(1857)にすでに、箱館奉行所に提出されていたが、
新政府になってからも公開されることはなかった。
武四郎が亡くなったのは明治21年71歳であるが、ようやく出版された
のは明治45年(大正元年)のことである。
この近世蝦夷人物誌というのは、99人の老若男女アイヌの姿が書かれている。
アイヌに対する偏見(野蛮・乱暴など)が強くあった中で、優れた能力を持ち人徳もあり、
幕府や藩の方針に服している者も多くいる。
過労と環境の変化、天然痘や梅毒などの伝染病で体を痛めた者、一家の働き手を
つれさられて老人・子供・不具者だけが貧しいその日暮らしをしいられている者、
年頃の男女がいなくなって人口や世帯の少なくなってしまった村。
アイヌの悲惨な生活と深刻なコタンの様子がきめ細かく紹介されていた。
松浦武四郎は、これらを踏まえて日本人は蝦夷地開拓に
挑まなければならないと進言していた。
ところが、東京待機で北海道の命令はおりず、とうとう判官
を辞職してしまう。
(写真は、アイヌ民族から和人への交易品である鹿皮)
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