農業の大切さを伝える“土の博物館”
上富良野町の「土の館」には世界の農耕具、トラクタやプラウ、
国内外から採取した土壌を標本にして展示しています。
この「土の館」は平成16年に北海道遺産に選定されました。
平成4年、農機具の開発・製造・販売を行っているスガノ農機株式会社が、
創業地の上富良野町に開館しました。
「土の博物館」は二棟に分かれています。北海道に初めて導入された
鉄車輪トラクタ含む世界各地のトラクタを展示した「トラクタ博物館」は
実車だけではなく、それらが実際に使われていた頃の写真やパネルも豊富にあります。
スガノ農機が創設した土の博物館。過酷な気象条件の中で進められてきた開拓の経緯や、
土と人の関わりの大切さを伝える。
なかでも、高さ4mの巨大な土の標本展示は見もの。
一階からニ階への踊り場にかけられたモノリスも非常に大きく、
階段を上っていく時に見上げるとうっかり足元を踏み外しそうになるほどです。
これは十勝岳泥流地帯のものです。
十勝岳は大正15年5月24日に大規模に噴火しました。
山頂付近の残雪を溶かし、美瑛川、富良野川を一気に駆け抜け、上富良野を呑み込みました。
泥流に押し流されて死亡した人、行方不明になった人144名にも及ぶ大惨事となりました。
断面標本は大昔の腐食黒色化した植物が生えた土の層、沼地に土砂が堆積した層、耕作
した作土など、土質は時代ごとに違います。
十勝岳噴火により生じた泥流災害で富良野川は汚染されてしまい、その影響を受けた層は
鉱毒が強く、今でも草花が生えません。噴火の凄まじさがよく分かります。
階段を上っていくと、自動で説明テープが流れます。
旭川出身の小説家、三浦綾子の『泥流地帯』、『続泥流地帯』はその災害に見舞われた人々、
農業の再興に奮闘した姿が描かれたものです。
土と人との密接な関わりを学ぶ上でも、『土の館』を訪れる際に合わせて知っていただきたい名作です。